・・・ヴィクトリア・サンドイッチ・・・
イギリスで一番親しまれている、ヴィクトリア・サンドイッチという名前のケーキです。ゴージャスな名前のわりに、ずっしりとしたスポンジケーキ(というよりパウンドケーキ)にジャムを挟んだだけという朴訥すぎるケーキなんですが、昔ながらの素朴でシンプルな味が愛されているようです。日本で言うところの、苺の三角ショートケーキ的なポジションでしょうか。
苺の三角ショートケーキといえば不二家、そしてペコちゃんですが、私はこのペコちゃんを見るたびに若かりしころに受けた心の傷がよみがえります。あの屈辱的な出来事は、私のその後の女としての生き方を決定づけたと言っていいでしょう。
あれはちょうど今時期の北海道。雪深い田舎町で高校生だった私は、週に3回、学校帰りに不二家でバイトをしておりました。町に唯一あったケーキ屋さんでしたが、お客さんがあまりこないので、売り子は私1人きり。店内は誰にも干渉されない自由な空間だったので、お客さんがいないときには本を読んだりラジオを大音量でかけて1人コンサートをやったり、今思えばとても素敵なバイトでした。
その日もかなりヒマだったので、ガラス張りの店内の中から、降り続く外の雪をボーッと見ておりました。すると、なにか肌色の大きな物体がお店の前を横切りました。しばらくするとその肌色の物体が戻ってきて店先にピタッと停止。それは全身全裸のオッサンでした。極寒の真冬の北海道で全裸。すごい根性です。
ガラス越しに店内を凝視するオッサン。「きゃー、変質者!私、狙われてるっ!どうしようっ!」、恐怖におびえながらオッサンをよく見てみると、なんとそのオッサンは女子高生の私には一瞥もくれずにペコちゃんを凝視して興奮しているのです(冬は雪が降るのでペコちゃん人形は店内に置いています)。
てゆーか、そのときの私、ピチピチの女子高生なうえに、セーラー服に不二家のフリフリのエプロン姿ってゆー、ヘタするとその手のお店みたいなコスチュームだったんですけど。
そんなコスプレもどきな格好をしているにもかかわらず、女としてペコちゃんに完全敗北した私。速攻警察に連行されていくオッサンを見送りながら「ブタ箱から一生出てくんな。この変態野郎!」と悪態をつきつつ、”セクシー度ペコちゃん以下” の烙印を押された事実に女としてのプライドはズタズタ。このとてつもない敗北感は、外で降りしきる真っ白な雪でさえ覆い隠すことはできませんでした。
ということで、その日以来、”目指せペコちゃん越えろペコちゃん” を胸に掲げて生きてきました。あれからずいぶんと長い年月が流れましたが、私は少しでもペコちゃんに近づけているのでしょうか。新年あけまして、今年もペコちゃんを目指します。
——————————
— ヴィクトリア・サンドイッチ(直径18cmの2段ケーキ 1個分)—
バター(室温に戻したもの)175g
砂糖 175g
卵(冷蔵庫から出して室温にしておく)3個
小麦粉 175g
ベーキングパウダー 小さじ1と1/2
ラズベリージャム 大さじ5
生クリーム 120ml
粉砂糖 適量
——————————
オーブンは180度に熱しておく。直径18cmのケーキ型を2つ用意し、型の底と側面にオーブンシートを敷いておく。
ボールにバターを入れ、砂糖を加えて泡立器で白っぽくなるまで混ぜる。
卵を溶きほぐし、少しずつボールに加えて分離しないようにその都度良く混ぜる。
小麦粉とベーキングパウダーを合わせてふるい入れ、さっくりと混ぜ合わせる。
オーブンシートを敷いたケーキ型2つに流し入れて、表面を平らにし、約20~30分、表面がキツネ色になるように焼き上げる。
型から出して網の上で完全に冷ます。
生クリームはホイップしておく(ジャムが甘いので生クリームには砂糖は入れなくてOKです)。
一枚のケーキ生地の上にジャムを塗り、その上から生クリームを塗ってもう一枚で挟む。
上から粉砂糖をふりかけて出来上がり。