Bulgarian Banitsa

・・・ バニツァ・・・

ヨークシャーに引っ越しして、ここで一番仲良くなったブルガリア人のKちゃん。生粋のゴスです。
ヨークシャーはロンドンとは違い、この土地で生まれ育った人がほとんどを占めており地元感がすごいのでKちゃんのようなタイプは異端に分類されるんですが、おそらくその辺が私と通じ合った所以でしょう、出会ってすぐに仲良くなりました。
はじめて合った日に「あ、メイク可愛いー♡」とゴスにメイクを褒められてかなり複雑な気持ちにはなりましたが、ゴスのくせにとってもポジティブでよく笑う可愛いKちゃんは、ロンドンの友達と離れて淋しかった私の心をとても癒してくれました。家がすぐ近くなので、お互いの猫の面倒を見合ったり、一緒に買い物に行ったり、Kちゃんお気に入りの近所の墓地(ゴスなんでね…)でピクニックをしたりしています。
その近所のお墓は見晴らしのいい丘にある静かで落ち着くスポットということで、Kちゃんは1人でもよくその墓地に遊びに行っておりました。

ある日、Kちゃんの家でまったりしていた時のことです。
「そうそう、あの墓地に通っていたら、あの土地を所有している地主さんと友達になってさー。代々続く葬儀屋さんなんだって。今週末は私の誕生日だからホムパをやるって話したら、パーティーグッズを持ってきてくれるって言うんだよねー。もうそろそろ来る時間だと思うんだけど何持ってきてくれるのかな。楽しみ♡」とKちゃんが言いはじめました。
”へー、あの墓地のある土地って個人の所有なんだなー…” と思いながらお茶を飲んでいると、その葬儀屋さんの友達がやってきました。棺桶を抱えて。

「ハロー、Kちゃん!サプラーイズ!これ誕生日パーティーのディスプレイにどうぞ!」
「わおー。最高♡ 素敵な棺桶ありがとう!」
「絶対気にいると思ったんだよねー。」
「この棺桶でパーティーもきっと大盛り上がりだよ!ありがとう!」

. . . どんなサプライズだよ葬儀屋さん。そして全く戸惑うことなくあっさりと棺桶を受け入れるKちゃん。なかなかのシュールな光景を後にその日は家に帰りました。

週末になり、Kちゃんの誕生会に行くと天井のミラーボールでライトアップされた棺桶がリビングにドーン。そして、Kちゃんの友達が入れ替わり立ち代り棺桶に入ってインスタ用の映え写真を撮りまくっています。「映えるわー」と言いながら棺桶内で全力で決めポーズをするヤングなゴスたち。棺桶でアヒル口。恐るべしミレニアルズ。
「ミサも写真撮りなよー♡ 棺桶に入れる機会なんて一生に一度もないよー!」と言われましたが、”そりゃーねーよ。死んでからじゃなきゃ入れないんだから” と思いながら丁寧にお断りしました。

誕生会の宴も終わり、数日後に葬儀屋さんが棺桶を引き上げにきたとのことですが、きっとこの後これを誰かが使うのだろうと思うと複雑な気持ちです。アーメン。

今月に入り、ロックダウンの規制も徐々に緩和されてきたので、先週は久しぶりにKちゃんとまた例の墓地で落ち合いました。
そこで教えてもらったブルガリアの国民食バニツァ。ヨーグルトとチーズと卵のフィリングを薄い生地で包んで焼いたセイボリーなパイです。さすがブルガリア、ヨーグルトがフィリングだなんて(ちなみに「日本でブルガリアといえばヨーグルト」と言ったら、「なんだそれ」と言われました)。はじめて食べましたが、パイなのにあっさりとしていて重くなく、クセになる味。朝食やおやつによさそうです。
フィロ生地さえあれば簡単に出来るので、また今度Kちゃんに会うときに作って持っていって、墓地でしっかりバニツァ検定を受けたいと思います。

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— バニツァ(直径23cmの丸型1個分

バター 80g

プレーンヨーグルト(できればグリークヨーグルト)300ml

ベーキングソーダ 小さじ1/2

フェタチーズ 200g

卵 4個

塩 小さじ1/4

フィロ生地(大判)10枚

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バターは、電子レンジか湯せんで溶かしておく。オーブンは180度に熱しておく。フェタチーズは小さめに砕く。

ヨーグルトとベーキングソーダをボールに入れて良く混ぜ合わせ、5分ほど放置する。

卵3個と卵白1個分を溶き合わせ(卵黄1個分は後で使うのでとっておいてください)ヨーグルトのボールに加えて混ぜ合わせる。砕いたフェタチーズも加えてさっくりと混ぜる。

フィロ生地を広げて、溶かしバターを刷毛で薄く塗る(溶かしバター20g分は後で使うので残しておいてください)。フィリングをスプーンですくって生地の上に薄く広げ、ゆるく棒状に巻く(ゆるい巻き寿司のような感じで)。これを10枚分繰り返す。

丸型の耐熱容器(もしくはパイ型)にバターを薄く塗り、棒状の生地を渦巻き状に巻いていく(容器がいっぱいになるように)。

とっておいた卵黄1個分と溶かしバター20g分を混ぜ合わせ、渦巻き状のパイの表面に刷毛で塗る。

180度のオーブンで約30分、表面がきつね色になるように焼き上げて出来上がり。

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