Jacket Potatoes

・・・ ジャケット・ポテト・・・

日本のお料理ブロガー/インスタグラマーさんたちが華麗なるお正月料理をアップされている中、新年早々ただのじゃがいもの丸焼きですみません。謹賀新年。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

おせちにお雑煮、初詣。日本で “お正月” と言えば、情緒も美味しい食べ物もてんこ盛りのまさに行事界のキングですが、こちらでは元日はクリスマスの一部というか、ここ数週間続いた乱痴気騒ぎの閉会式フィナーレ的な感じで、大晦日のカウントダウンパーティー → 二日酔い → 我に返る、という段階を経て、1月2日からはごく普通の日常の日々に戻ります。新年を迎えた後のその変わり身の早さは、他に好きな人ができたときの女子ぐらい淡白です。まあ、秋ぐらいからクリスマスクリスマス言われはじめ、ウキウキ感の押し売りに疲れ切ってますからね、さっさと普通に戻りたい気持ちもわからなくもないです。

特別なお料理を囲みながらゆっくりと家族や大切な人たちと過ごす日本のお正月はやはり最高だと私は思いますし、母の作るおせちもお雑煮も恋しいのですが、ある一つのトラウマが私を冬の北海道に帰省するのをためらわせ、もう随分長いこと実家でお正月を迎えられておりません。

あれは、私がまだ中学生だった頃の極寒の12月でした。
日本の最北に位置する北海道の冬はもちろんとてつもなく寒いのですが、その分家の中の防寒設備はパーフェクト。真冬で外は吹雪いていても家の中では半袖でガリガリ君を食べているぐらいの暖かさで生活しています。私の実家も類にもれず、高性能な石油ストーブやセントラルヒーティングで家の中はホッカホカ。
ですがそんなある日のこと、私が学校から家に帰ると家中のすべての暖房設備が取り払われ、リビングの隅に1つポツンとめちゃめちゃ小さな薪ストーブが置かれていたことがありました。
いつもとは違う家の中の気温に体を震わせながら、感のいい私はすぐさま気がつきました「ああ、美鈴ちゃんのせいか . . . 」と。

うちの父は相当な変わり者で、何かに感銘を受けると家族を巻き込んで直ちにそれを実践しようとします。そういえば数日前、父はテレビの前で『雪国の少女美鈴ちゃん』というドキュメンタリー番組に見入ってましたっけね。
美鈴ちゃんは北海道でもかなり僻地の山奥におじいちゃんと一緒に暮らしており、毎日雪山を超えて学校に通っています。そして美鈴ちゃんの家には薪ストーブ。薪割りのお手伝いもしっかりとするとてもいい子です。
なんだか妙にテレビに釘付けになっていると思ったら、数日後には家族全員に薪ストーブ暮らしを強要。行動力のあるクレイジーな人って世界で一番迷惑です。近所のホーマックで急遽購入してきた柴犬サイズぐらいのキャンプ用かなにかのしょぼい薪ストーブで、一家全員が春まで生き延びられると思っているんでしょうか。てゆーか、火を絶やさないように薪をくべ続ける係が私なのはなぜですか?美鈴ちゃんの家では優しいおじいちゃんがその辺の管理をしていたかと思いますが。

だけど私は生き続けたい!若干14歳で冷凍サンマになりたくない!ただひたすらその思いで、私は毎日毎日斧を振って薪を割り続けました。実家は私の通う中学校の通学路に面していたので、早朝から家の前で一心不乱に薪を割る私の姿を見た同級生たちに『キコリ』と呼ばれたりもしました。

そんな辛い毎日の中での私の唯一の楽しみは、薪ストーブの中でこっそり作るホクホクの焼きじゃがいも。アルミホイルにじゃがいもを包んで薪ストーブの中でじっくりと焼き、バターをのせて食べていたあの焼きじゃがいもが本当に美味しかったことを今でもすごく覚えています。

超小型薪ストーブのみで雪国で生活するのはさすがにヤバいと父も気がついたので暗黒の薪ストーブ時代はそう長くは続かなかったものの、そんなこんなの思い出で未だに冬に実家に帰省するのが憚られていたのですが、そろそろ日本のお正月が本気で恋しいので来年再来年あたりには勇気を持って冬に実家に帰省してみたいと思います。
ということで、もし万が一テレビで ”美鈴ちゃんリターンズ” みたいな番組がやっていて実家にまた薪ストーブが設置されていたとしても、今度はより一層美味しいじゃがいもの丸焼きが食べられるようにお気に入りのトッピングを現在模索中。

皮付きのじゃがいもがジャケットを着ているように見えることから、イギリスでは “ジャケット・ポテト” と呼ばれるじゃがいもの丸焼き。本日のトッピング、ベーコンとチーズ、サワークリームの組み合わせも美味しかったし、あと他にいくつか美味しいトッピングのバリエーションを見つけたら心置きなく薪ストーブと対面することができそうです。

————————————

— ジャケット・ポテト —

じゃがいも(大)数個

オリーブオイル 適量

ベーコン 適量

バター 適量

チーズ(刻んだもの)適量

サワークリーム 適量

チャイブ(刻んだもの)少々

黒胡椒 少々

————————————

オーブンは200度に熱しておく。

じゃがいもは皮付きのまま洗って水気を拭き取り、皮の表面にオリーブオイルを塗る。

オーブントレイの上にじゃがいもを並べ、約小一時間(じゃがいもの大きさによって調整してください)皮がパリッとして中に火が通るまで焼く。

ベーコンは小さく切り、フライパンでカリカリになるように炒める。

焼きあがったじゃがいもの上部に十文字の切り込みを入れ、下部分を指で押して中身が切り込み部分から少し出てくるようにする。じゃがいもが熱いうちにバターとチーズをのせ、その上にサワークリーム、焼いたベーコン、刻んだチャイブ、黒胡椒をふりかけて出来上がり。