Bublanina

・・・ ブブラニナ・・・

ある日無性にもちもち生地のナポリ風ピザが食べたくなりました。
飲食店が全て閉まっているこの状況で、もちもちピザを堪能できる手段はただひとつ。ナポリ人になりきって生地を1から作ること。
ですが生憎、現在イギリスのスーパーでは小麦粉の棚がいつも空っぽ。きっとロックダウン下で時間に余裕ができた人たちが皆ナポリ人になってピザ生地を捏ねくり回しているからでしょう (←違います)。

ただいまコロナ対策のため、ソーシャル・ディスタンス (2m以上) の規制がかかっているので、スーパーでは1度にお店に滞在できる人数が決まっており、1人出ては1人入店… という原始的システムが採用されています。そのため近所の大手スーパーの駐車場には入店待ちの人たちが列をなし、雨ニモマケズ風ニモマケズ食料を求めて並びます。ひたすら我慢の一途です。もしかしたらこの吹きさらしの場所で無理やり並ばされるこの罰ゲームみたいなシステムによって、丈夫な体と免疫力を国民に培わせようという英国政府のスパルタ計画なのかもしれません。

やっとの思いでスーパーに入店すると、今度は店内の一方通行システムが待ち構えています。スーパー内では顧客が歩く方向経路が全て決まっており (床に矢印が貼られています)、一度通った経路は2度と引き返すことはできません。欲しい商品をカゴに入れ忘れた時点でゲームオーバー。
『俺来た道戻らないから、覚える必要ない。自分の来た道突き進むだけだから』とローランド様が発言し絶賛されておりましたが、スーパーでうっかり卵を買い忘れたけど卵売り場に戻れないとなると、パンケーキの予定がナンに変更になってしまうので、この場合道は覚える必要があります。
なので、前日から店内のレイアウトを精密にシュミレーションし、商品棚順にまとめたお買い物リストを作成、慎重に計画を練り上げてスーパーに出陣します。

ただここで問題になってくるのは、行きつけのスーパーでは小麦粉の棚が経路の一番最後に位置しているということ。小麦粉の棚がほぼ空っぽのこの状況下、ピザの具材を揃えたはいいものの、ベースを作る小麦粉が最後に入手できなければ、もちもちピザの予定がただの野菜のチーズ焼きに変更になってしまいます。

ということで、なんとかあらかじめ小麦粉を用意したい私はあることを思いつきました。
“近所の謎の東ヨーロッパ食材店に行けば小麦粉あるんじゃね?”
日本でもハロー、ブラジルでもハロー、カザフスタンでもハローを貫くイギリス人が、英語以外の文字が書かれた食品に手を出すわけがない、そう見込んだわけです。

私の思惑は大当たり。その異国情緒あふれる食材店の棚には小麦粉がわんさかならんでいました。それはそれは色々な種類の小麦粉が。

 . . . えー。もちもちのピザ生地に欠かせない ”強力粉” がどれかさっぱりわからないんですが。。

一応、チェコ語とハンガリー語とポーランド語で ”小麦粉” にあたる単語は勉強していったものの、小麦粉の種類までは気が回らなかった己の詰めの甘さ。
店員さんに聞きたくも、ソーシャル・ディスタンスルールがあるので呼び止められません。
仕方ないので、ピザの神様にお力添えをお願いしながら、第六感を頼りに ”コレだ!” とピンときた小麦粉を手にとって家に帰りました。

結果、それはふわふわのお菓子作りに最適なライトな薄力粉でした。強力粉と真逆のやつです。

この謎の小麦粉の用途を調べようと、パッケージに書いてあるアルファベットにニョロニョロが生えたような文字の解読を試みるも2秒で断念。
「東欧のお菓子でも作りゃーいいんだろ。そんな気分じゃないけどな。ちっ(←強力粉が買えなかったので毒づく小物)」 と、ネットで調べた ”ブブラニナ” なるものを作ってみることにしました。チェコスロバキアの、昔ながらのおやつだそうです。チェコとスロバキアが分離前からあったケーキってことですね。

出来上がったブブラニナは、パウンドケーキをもう少ししっかり目にした感じの、素朴で懐かしい味わいのケーキでした。今回は、ブルーベリーとラズベリーを使用して作りましたが、チェリーでもよく作られるみたいです。
たまには計画変更も悪くないかも . . . と、ブブラニナを頬張りながら、Google翻訳アプリ (画像翻訳機能付き) をとりあえずインストールした初夏の候。

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— ブブラニナ(22cmスクエアケーキ型1個分

バター(室温にもどしたもの)140g

砂糖 140g

卵(卵黄と卵白に分けておく)4個

レモンの皮(すりおろしたもの)1個分

バニラエッセンス 数滴

サワークリーム 80g

薄力粉 200g

ベーキングパウダー 小さじ2/3

ブルーベリーとラズベリー(冷凍したもの)200g 

粉砂糖 少々(オプション)

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オーブンは180度に熱しておく。ケーキ型にクッキングペーパーを敷いておく。

室温に戻したバターと砂糖をボールに入れ、白っぽくなるまでよく混ぜる。

卵黄をボールに加えて混ぜ合わせ、さらにレモンの皮とバニラエッセンス、サワークリームを加えて混ぜる。

薄力粉とベーキングパウダーを合わせてボールにふるい入れて混ぜる。

別のボールに卵白を入れ、ハンドミキサーで角が立つまでかたく泡立てる。できたメレンゲを少しずつ生地のほうのボールに加え、泡を潰さないようにさっくりとヘラで混ぜる。

ケーキ型に生地を入れ、表面を平らにならす。表面にブルーベリーとラズベリーを凍ったままのせて、指で軽くおして半分ぐらい埋める。

オーブンで約30~35分、中まできちんと焼きあがったら(中央に串を刺して生地がついてこないかチェックしてください)オーブンから取り出して冷ます。

上から粉砂糖をふりかけて出来上がり。

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